婚活パーティー追想記

恋愛こじらせアラフォー男子が婚活パーティーに参加した体験を追想します

037. 婚活パーティー【体験】初カップリング こだわりを捨てて(14)

そのうち停車駅を告げる車内アナウンスが始まって、電車のスピードも落ちていく。

 

Dさんが降りるまで、あと10秒くらい。

 

「次ですよね」

「はい」

「今日はありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました。楽しかったです」

 

最後の「楽しかったです」は僕が最初に言うべきだったかもしれない。

 

そう思ってすぐに「僕も楽しかったです」と付け加えたが、なんだか後出しじゃんけんみたいで不格好だった。

 

「あとでLINEしますね」

「はい」

「気を付けて帰って下さい」

「駅でちょっと買い物していくので」

「甘いものも買うんですか?」

「バレました?」

 

その台詞を口にした時のDさんの挑戦的な表情が、一番魅力的だった。

 

扉を抜けて階段に消えていく彼女の後ろ姿を見送りながら、そう思う。

 

Dさんのいなくなった車内。

 

閉まったドアにもたれて、多少の疲れを感じた。

 

……で、僕は一体、彼女とどうなりたいんだ?

 

喫茶店で小一時間、一緒に過ごした後でも、その問題は目の前に立ちはだかったままだ。

 

なにかしらの答えを出さなきゃいけない。

 

好きか嫌いかで訊かれたら、好き。

 

……いや、それは嘘だな。

 

いいなと思う気持ちは「好き」には直結しない。

 

自分の中の「好き」なんて、全容量の1%くらいしかないのはわかっている。

 

暗闇で泥の中に手を突っ込んで、偶然、金塊を掴むようなものだ。

 

どうしようもないな、と自嘲するしかなかった。

 

 

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