そのうち停車駅を告げる車内アナウンスが始まって、電車のスピードも落ちていく。
Dさんが降りるまで、あと10秒くらい。
「次ですよね」
「はい」
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました。楽しかったです」
最後の「楽しかったです」は僕が最初に言うべきだったかもしれない。
そう思ってすぐに「僕も楽しかったです」と付け加えたが、なんだか後出しじゃんけんみたいで不格好だった。
「あとでLINEしますね」
「はい」
「気を付けて帰って下さい」
「駅でちょっと買い物していくので」
「甘いものも買うんですか?」
「バレました?」
その台詞を口にした時のDさんの挑戦的な表情が、一番魅力的だった。
扉を抜けて階段に消えていく彼女の後ろ姿を見送りながら、そう思う。
Dさんのいなくなった車内。
閉まったドアにもたれて、多少の疲れを感じた。
……で、僕は一体、彼女とどうなりたいんだ?
喫茶店で小一時間、一緒に過ごした後でも、その問題は目の前に立ちはだかったままだ。
なにかしらの答えを出さなきゃいけない。
好きか嫌いかで訊かれたら、好き。
……いや、それは嘘だな。
いいなと思う気持ちは「好き」には直結しない。
自分の中の「好き」なんて、全容量の1%くらいしかないのはわかっている。
暗闇で泥の中に手を突っ込んで、偶然、金塊を掴むようなものだ。
どうしようもないな、と自嘲するしかなかった。
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